タダでできる人材育成

ただでできる人材育成と聞くと、OJT…上司や先輩による職場での指導と思い浮かべる人が多いかも知れませんが、OJTは業務指導が中心になり、必ずしも”育成”にまでは至りません。

以下述べます「ただでできる人材育成」を端的に言えば、
相互理解を深めながら経営について真剣に議論することです。

その効果は人材育成ばかりではなく、自律的行動の促進、経営の進化、シナジー効果、組織力向上など様々な効果が見込めます。全社員に目が届く規模の組織でこそ実践していただきたい内容です。

以下少し長くなりますが、何故「相互理解を深めながら経営について真剣に議論すること」が人材育成に繋がるのか、その理由と具体的な方法を示しますので、多少の時間は要しますが、タダでできますので、費用をかけて研修や制度導入をするぐらいなら、それより先に実践してください。


1.社員との議論が必要かつ有効な理由

BizHintによる2020年3月の「経営人材」に関するアンケートによれば、
既に備わっている経営に必要な資質は、

    1. コミュニケーション能力
    2. 判断力
    3. 実行力

などがアンケートの上位にあがり、
不足している資質としては、

    1. 戦略的思考
    2. IT知識/スキル
    3. 資金調達の能力

などがあがっています。

また、社長の右腕的存在が必要かとの問いには、63.5%が必要と答えていますが、
右腕がいない、もしくはわからないとの答えが約48%に上っています。

一方、経営者の方々は今後も自社の経営を担いたいが67%であるのに対し、経営者以外の方々の回答は、経営を担いたいとの答えが25%に対し、担いたくないが32%と最多になっています。

これらのアンケート結果は日本企業の現状の傾向がよく現われていると思います。
もしそうであるならば、経営人材の育成は多くの企業で共通した課題です。ある程度の規模になれば経営に携わることへのモチベーションを持った人材を発掘することも可能かもしれませんが、起業間もない企業などそれほど規模の大きくない組織では容易なことではなく、日々の業務に追われ、後回しになってしまうのが通例です。

そのような組織では、良くも悪くも社長がリーダーシップを強く発揮せざるを得ず、トップダウン型が強化され、益々社員が受動的な姿勢になってしまいがちです。

それでも、事業が順調であれば大きな問題は起きませんが、ひとたび不測の事態が生じれば社長が東奔西走せねばならない事態となり、運が悪ければ存続の危機さえ招きかねない事態に発展する危険性すらあります。

そこで、事業が順調に推移しているうちに、多少無理をしてでも社員と経営について共有し、経営に関わる問題について社長と社員が協議できる場をつくり、悪循環から脱却する必要があります。その実践が人材育成にも繋がり一石二鳥、三鳥にもなるということです。


2.社内で相互の考えを共有する場を意識的に増やす

ここで対象としている中小企業とは、規模的に効率化を推進することが困難で、現業に大半のリソースを費やさざるを得ない状況の組織です。規模の経済が働かないデメリットばかりに目が向きがちですが、

    • 全員に目が届く
    • 意思疎通を迅速に行える
    • 全社で相互理解を深める気になれば可能

など、大企業では不可能な小規模ゆえのメリットが多々ありますので、それを活かさない手はありません。と言うよりも、これらのメリットを活かして規模が拡大する前だからこそじっくりと取り組めることがあります。

それは大企業でも常に重要なこととして取り組まれていても、なかなか実現できていないことなのです。それは…

『理念やビジョンの共有』

です。と言っても大上段に構えていきなり抽象論の議論をしても、おいそれと思った成果は得られないでしょう。そうではなく、理念やビジョンをより身近なものとして、自分事として相互に話し合うことが重要です。しかし、規模の大きな組織では、多大な時間を消費する懸念から、このプロセスは省かれ、上層部や専門部署で検討され、決定された『理念やビジョン』を一方的に伝えるばかりになってしまいがちです。まずは、以下のようなことを話し合う機会を工夫し、各自の考えを率直に話してもらう、相互に質疑応答などもしながら充分に理解し合うことが重要です。

    1. 組織と個人それぞれの将来像について共有する
    2. 今行っている仕事の目的と個人それぞれにとっての意味を考える

1の将来像は、それぞれの立場や背景から将来の社会や世界がどのように変化していると想像しているかによっても、その内容が異なってくると思いますが、まずはそのようなことは抜きにして自らが所属する組織や自分自身について、将来どのようにありたいと願っているのかを率直に話し合い、それぞれの意見を否定せず理解し合うことに努めます。その上で、3年後、5年後、10年後それぞれでは、AIとの協働はどれほど進展しているのか、働き方や仕事はどのようになっているのか、社会の生活環境、経済状況、国際関係は…と、視野を徐々に拡大し自らに影響が及ぶであろうことについてある程度の共通認識ができるほどの情報収集や話し合いが進展すると、会社の『理念やビジョン』について、抽象論ではなく語り合う土壌ができてきます。

2の仕事の目的と意味は、言い換えれば組織にとっての意味と個人にとっての意味ということです。全ての仕事は何かのためになされている筈ですので、それぞれの仕事の目的が明確になれば、全ての仕事、役割が相互依存的であることが理解できます。
また、個人にとっての意味とは、その仕事をしている本人自身にとってのメリットということです。メリットとは対価として給料を得ることというだけでなく、その経験が個人の将来にどのように役立つのかということです。
組織にとっての目的、意味だけが明確で、個人にとっての意味が不明確であれば、仕事は”義務”となり「~ねばならない」というべき論になりますが、個人にとっての意味、メリットが明確になれば、本人自ら「~したい」という面が生まれ、自律的な意欲となります。個人にとっての仕事の意味を見出せるように相互に支援し合うことは非常に重要です。どちらの状態がパフォーマンスを期待できるかは自明ですね。


3.目標を共有する

『理念やビジョン』について相互の考えを共有できるようになれば、その延長上に組織と個人それぞれの『目標』も話題に上がります。
ここでいきなり、「目標管理制度」を導入するようなことまで考える必要はありません。ビジョンに対する中間ゴール、マイルストーンとして具体的に個々人が想像できる将来のゴールです。
一般的にはビジョンに近づくための1年後のゴールを検討するのがわかりやすいだろうと思います。やはりこれも組織での仕事のゴールと個々人それぞれのゴールが共有できるとよいでしょう。

ここまでの内容を図として整理してみますと下図のようになります。

Vision Goals

*図の注釈

横に時間軸(左:過去、現在、右:将来)
縦に上:組織、下:個人 …この二軸で四象限

上:組織の領域(この領域だけで目標を定めるとベキ論に陥りがち)

      • 第1象限:仕事上の課題として最も共通認識がしやすい領域
      • 第2象限:経営に携わる立場であれば検討している領域だが組織の共通認識には至っていないことが多い

下:個人の領域(組織内で共有されることが少ないがモチベーションの源泉)

      • 第3象限:個人それぞれの表層的動機の源泉
      • 第4象限:個人それぞれでバラバラであり不明確であったり、適切に認識できていないことも多い
      • 企業理念:組織の存在理由
      • 経営理念:企業理念に基づき、現在の組織運営における考え方
      • ビジョン:中長期的ゴールイメージ
      • 目標:4象限のいずれにも偏向せず、全てを統合できることが理想であり、目標達成の可能性も高まるが、やや将来よりに設定できると尚よい

4.徐々に精度を上げていく

このようなテーマの話し合いができる場を意識的に設け、徐々にそれぞれの視野を拡張し、また精度を高めていくことができれば、この過程そのものが経営人材を発掘し、育てていくことになる筈です。
ポイントは組織経営と個々人のこととが不可分であり、相互依存的であることを共有することにあります。特に規模の小さな組織では、あるひとりの個人的な課題は組織的な課題でもあるということです。しかし、これを認識し、具体的に行動できている組織は多くはありません。
また、このような話し合いは、眼前の仕事とは別に時間を充当しなければなりませんが、将来への投資として割り当てるという経営的な判断がなされる必要があります。そうでなければ現業が圧迫され、話し合いの内容が充実する前に、不満が高まってしまいます。

 


まとめ

いかがだったでしょうか。いきなり全社員で定期的に話し合うというのは難しいと思いますので、社長と数名の方で気軽な感じで始め、徐々に形を整え、人数を増やしていくとよいでしょう。

また、慣れないうちは外部の進行役を起用するのも一法です。
時間を決め、効率的かつ円滑に進められます。

この記事内容や、その他経営についてお気軽にお問い合わせください。

【✉お問い合わせ】

OnlineSeminarButton

 


無料eBookプレゼント


企業経営者の方々にとって、どんなに優秀な社員であっても、
・いまいち危機感を共有できていない
・目線が低い
・自分の考えがない
・指示待ち
・頼りない
・結局自分で全て行わなければならない

などと思ってしまう場面がありませんか?

それは、経営者と従業員とでは全く立場が異なるからです。
このeBookでは、この立場の違いを超える方法をわかりやすく説明していますので、読んだ直後から実践できます。是非、試してみてください。

無料eBookダウンロード→

関連キーワード

関連記事

RELATED POST

この記事へのコメントはありません。

PAGE TOP
MENU
お問合せ・FAQ

TEL:03-6869-5278

(月 - 金 9:00 - 18:00)