業績マネジメントは体系的マネジメントの基礎

  • 業績や成果が売上や利益ということはわかるが、そうだとすると売上や利益を上げることに直接関わらない部署は業績を上げていないことになるのだろうか。
  • スタッフ部門は、プロフィットセンターに対してコストセンターとも呼ばれるし。
  • スタッフ部門は、業務を効率化し、コストを抑え、プロフィットセンターの足を引っ張らないようにすることだけが役割なのだろうか。

などと疑問に思ったことはありませんか。
スタッフ部門それぞれには、組織全体から期待される役割がありますから、
それに応じた業績が求められます。
ただ、その業績が何であるかが曖昧であることが多いのも事実です。
しかし、アウトプットすべき業績が曖昧なままですと、
マネジメントの基準も不明確になりますし、メンバーのモチベーションを引き出すことも困難
になります。

私は30年以上、企業のマネジメント教育に携わってまいりました。
その間企業を取り巻く環境は大きく変化し、マネジメントに求められる役割も変化してまいりました。しかし、その本質的意義は何ら変わりなく、難易度が急上昇していますので、テーマごとに具体的なマネジメントの内容を改めて整理しておく必要があると思います。

そこでこの記事では、マネジメントの基礎とも言える業績マネジメントについて、改めて俯瞰的に整理します。目標管理を導入しているか否かに関わりなく、自らの仕事を通じた業績が何であるかを明確にし、共有することは、組織に携わる方なら不可欠です。

また、人事制度を導入する場合の前提にもなりますし、各業績相互の関係を明確にすることで、組織マネジメントの体系が把握できます

売上を上げることや、部下を育成することは、業績のほんの一部です。
特にマネジメントに携わる方は、マネジメントが目指すべき業績の全体像を改めて一緒に考えてみませんか。最後までお読みいただければ、スッキリと整理できると思います。


1.業績マネジメントは体系的マネジメントの基礎

Business Process

組織マネジメントを効果的に実践し、組織力を最大化しようとするならば、
管理職のマネジメント力を向上させるだけではうまくいきません。
何故ならば、管理職のスキル向上を図ることができたとしても、担保できるのは部分最適でしかなく、
各管理職のベクトルが揃っていなければ、互いに打ち消し合ってしまう可能性もあるからです。

組織全体の目的を達成するために、部門ごとに異なる役割を担うことは、経済的には合理的です。
しかし、それだけでは上位の目的を忘れ、部門ごとのベクトルがバラバラになってしまいますから、
相互に協働できるようにすることが不可欠です。

組織共通の目的に向けてベクトルを揃え、相互の協働を促進しするのが業績マネジメントです。
パフォーマンス・マネジメントなどとも呼ばれますが、
平たくいえば、我々が目指すべき成果、業績は何か、を組織内で共通認識ができるようにする仕組みです。

それだったら、わかってますよ。
我々の成果は言わずもがなの売上。
と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、それならば営業だけいればよいということになってしまいます。
しかし、それでは売上という成果は実現できません。
売上という成果を上げるためには、

よい製品、よいサービスを提供できる必要がありますし、
よいものをよいと適切な顧客からの評価、評判がなければなりませんし、
迅速に顧客の要求に応じるためには、営業が顧客対応に集中できるように周辺業務のサポートができる必要があります。

更に、これ以外にも様々な成果が必要です。

例えば、ある作業をする際、最終目的だけを定めてマネジメントをするということはありません。
どのようなプロセスを経て、各プロセスでは、どのようなアウトプットを次工程に渡さなければならないのかを明らかにしますよね。
そして、後工程のアウトプットは、それ以前の工程のアウトプットに依存しますので、最終結果だけを評価できても、適時適切なリカバリーをすることはできません。
言い換えれば、

最終ゴールに向け、
どのようなプロセスとアウトプット(業績)が必要かを明らかにし、
アウトプット間の影響関係も明らかにしなければ、
体系的なマネジメントができない

ということです。


2.組織における業績は、定量的なものばかりではないIn quality

先ほどの製造のプロセスにおけるアウトプットは、定量的に評価できるものが多いと思いますが、組織全体の活動については必ずしも定量的に評価できるものばかりとは限りません。
むしろ現時点では、定量化できない側面の方が圧倒的に多いのです。

にもかかわらず、経営計画に列挙されるような定量的に評価可能な側面ばかりが管理対象になり、定性的な側面はなかなか適切にマネジメントできないというのが実情です。

確かに定量尺度は、測定値間の比較や演算も有意であり、共通認識がしやすいという性質がありますので、よく目標管理などでも、目標を定量的に表現することが推奨されます。
しかし、あまり定量化に固執しすぎると、成果の本質的な部分が表現できず、却って変質させてしまうことが往々にして起きますし、また、それだけですと具体的なマネジメントには役に立たないのです。

そこで重要なのは定量/定性の視点ではなく、
業績をマネジメントレベルに適した抽象度で表現するということです。

どういうことかと言いますと、全社レベルでは単に”売上”として抽象的に全体を捉えることも必要ですが、
下位のマネジメントになるほど、

○○の”売上”、
□□エリアの○○の”売上”、
□□エリアの○○の新規顧客による”売上”、
□□エリアの○○のリピート率…

など、マネジメントの対象とする業績は、より具体的な内容となっていくのが一般的です。

今までの定量的尺度であれ、定性的な尺度であれ、
求める業績をより具体的に表現することが、業績マネジメントを成功させるカギです。

ところがこの辺りの実践が不充分で機能不全に陥っている例をよく見かけます。


3.業績を適切に表現する方法

”業績を適切に表現する”とは、マネジメントに役立つように表現すると言うことです。
例えば、営業担当の”新規顧客○件開拓”という目標の場合、
評価尺度は「新規顧客開拓数」であり、
合格水準が「○件」ということですが、
仮にその新規顧客のうちの1件は大口顧客で、かつ翌期に不良債権化してしまった場合、
これは求めるゴールだったのでしょうか。当然違いますよね。

つまり、前期の評価尺度「新規顧客開拓数」をより具体的に表現し、求めるゴールをより明確化しておく必要があった、ということです。

例えば「信用度○点以上の新規顧客開拓数」などと表現することが考えられます。

定量的な業績であっても言葉足らずな表現で齟齬が生じる例はいくらでもあります。
しかもこれは単なる表現の拙さの問題ではなく、マネジメントがミスリードすることにもなってしまいますから、意外とその損失が大きくなる懸念があります。

マネジメントレベルが下位になるほど、より具体的に表現し、その意味を組織内で共通認識ができるようにする必要があるのです。

トップマネジメントが直接に触れるのは、抽象度の高い業績かも知れませんが、
それがどのような具体的な成果を集約した結果として現れているのかを認識しておく必要はあります。
そうでなければ、結果として表れた数字の意味を的確に解釈できないからです。

そこで、業績をマネジメントする際には、

  1. 最小単位の業績はどのような評価尺度で評価すべきかを検討し、
  2. できるだけ具体的に表現し、
  3. それをマネジメントする単位で集約していくこと

ができれば理想的です。
しかし、このアプローチだけでは多大な労力を要しますので、
逆のアプローチ、即ち

  • 抽象度の高い業績表現から、それを構成する下位の具体的業績に分解していくこと
    (言い換えれば、評価尺度を分解していく)

を並行して行うと効率的です。
更に効率的に推進するためには、

  • 予め大きな業績領域の区分を共有しておくと効果的です。
    これにはバランススコアカードなどの考え方をベースにアレンジするとよいでしょう。

これらのワークを、

  1. 上位層からのアプローチと下位層からのアプローチを並行して行い、
  2. 組織横断的に中間層を中心に整合性の検証や集約を精査できると、

全社の業績管理システムの骨格ができます。
しかも、このワーク・プロセスは、
関わったメンバーのコミットメントとマネジメント力を向上させますので、運用も比較的円滑に進められることが期待できます。


4.定性的尺度の考え方

先に掲げた業績管理システム構築プロセスを要約すれば、

  1. 業績領域の設定(BSCベース)
  2. 上位層(ブレークダウンが基本)、
    下位層(ボトムアップを含む)、それぞれから業績領域ごとの業績を明確化
  3. 組織横断的に中間層による②の精査、集約

ということになります。

ところで、コストセンター、スタッフ部門の業績はどのように表現すればよいでしょうか。
実は、各部門に求められる業績を考えるには、その部門に期待される役割を明確にするとわかりやすくなります。

例えば、一般に人事部門に求められる役割は、

    1. 組織人事戦略の策定
    2. 人的リソースの有効活用
    3. 組織力の向上

と大きくは考えられると思います。
それぞれを機械的に尺度化すれば(測定方法は脇に置き)

1.~策定度、2.~活用度、3.~向上度、と~度とつければ尺度名にすることができます。
とは言え、それぞれが何を表しているかは解釈する人によりブレが生じますので、それぞれにどのような意味合いが含まれているかを洗い出していくと、業績の具体的な中身が浮かび上がってきます。

例えば1.組織人事戦略の策定は、続く2.3.の内容を規定していきますが、前提として
組織の事業戦略に応じたものである必要があると同時に、
組織マネジメントの観点から事業戦略に対して意見具申していくことも必要です。
また、組織人事上の施策は、大半が中長期的に成果、効果を期待して、なされるものですので、
内外の環境変化も想定している必要があります。
従って過剰な現状適応は却って問題をはらむ危険性があります。

2.3.については、
人事部門は推進役で、実践は各現場ということになりますので、
結果として成果がどの程度得られたのかということも重要ですが、
それ以上に各施策が他の部門や現場の納得感や理解をどの程度得られたのか、あるいは
その結果としてどの程度現場で実践されているのか
というような視点が重要です。

まさしくこれが定性的な視点です(定量化できる部分もあるが、ベースは定性的(質的))。

例えば、2.人的リソースの有効活用、という役割を果たすためにコントロールが必要とされる成果に
”人件費”とか”残業時間”など定量的な尺度があるとしますと、
いずれも圧縮されれば、人的リソースの有効活用度の向上が図れたと考えられます。
ところがそれにより、
社員の”モチベーション”や”サービスの質”などの定性的な尺度で低下したならば、
3.組織力の向上の役割においては、マイナスの結果を招くことになります。

このような業績間の影響関係は、具体的な業績尺度にブレークダウンしなければ見えてきません
特に定性的な尺度を避けていると、施策の副反応とも言えるマイナス効果が見落とされがちです。

ですから、安易に定量的なインディケーターだけを睨んで組織運営をすると、自らに向けてボディーブローを放つことになるかもしれません。


いかがだったでしょうか。
長くなり過ぎるので例示が限られていますが、業績マネジメントの重要性はご理解いただけましたでしょうか。

業績マネジメントの仕組みが社内で共有されていることが、組織マネジメントを向上させる前提です。

組織内のメンバー全員が、自分たちが何を目指しているのか、自らの業績は、他のどの業績に影響を受け、また影響を及ぼすのかなどを、相互に理解していなければ、組織内の協働を促進することはできません。

記事内の一般例を参考に、ご自身の組織における業績相関図を作成してみてください。

現段階では、評価されるべき水準(レベル)の設定は後回しで結構ですから、

定性的なものも含めて評価尺度を仮置きし、相互の影響関係を図に示してみると、
全体把握ができます。

また、全体の把握ができれば、ある1部門、1セクションの適切なマネジメントはどのようにあるべきかの適切な判断も可能となります。

実はこの図は、ピーターセンゲの学習する組織の中心的なフレームワークである「システム図」に発展させることが可能です。
システム図については、別途機会がありましたら、記したいと思います。

まずはご自身が所属する組織の業績相関図を仮設で結構ですから作成してみてください。全体を俯瞰でき、マネジメントの視野が拡がります。


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