マネジメントに必要なスキル

マネジャーになって部下育成や業績責任など期待されることは理解できたが、どうしたらそれらをうまくできるのかがわからない。
プレイヤーの時は、それなりにうまくできると自信もあったが、戸惑っている、
などとマネジャーになってそんな風に感じていませんか。

プレイヤーとマネジャーの仕事は全く異なるものですから当然の反応です。
しかも現在はプレイヤーの役割を保持したままマネジメントの役割が追加されるのが大半ですから尚更です。
そして、よくわからないマネジメントの役割よりも、慣れたプレイヤーの役割に自然と大半の時間を費やしてしまいがちです。
そうなってしまえばマネジメントスキルを磨くことができないばかりか、チームのマネジメントが不在になってしまいます。
できるだけ早く適切な理解をし、軌道修正した方が遠回りせずに済みます。

私は30年上、500社以上企業様に人事教育分野で関わらせていただき、マネジメント研修の受講者は3万名を超えています。
各社各様にマネジメント・スキルを細かく分け、それぞれに詳細な説明を加えていますが、ここではマネジメントの仕事と関連付け、直観的に理解できるようにあまり細分化せずに説明し、本質部分が理解できるようにしています。
もし現在、どのようにマネジメントの役割を果たしたらよいのかと迷いを感じているのなら、この記事を通して、マネジメントの仕事と求められるスキルについての本質的な理解を深め、今後の活動に役立てて下さい。


1.マネジメントの仕事と役割manager's job

マネジメントの仕事は、チームメンバーを通じて成果を上げ、他チーム、他部署、全社等へ貢献すること、です。
もう少し具体化しますと

  1. 貢献責任の領域:
    チームはどのような領域で組織に貢献することを期待されているかを明確にし、チームで共有する
  2. 目標:
    貢献すべき領域における中長期の目標とそれに対するマイルストーンとしての現在の目標を明らかにする
  3. 人的リソースの把握:
    チームメンバー個々の強みと課題、またそれらに対する本人自身の認識と、現在の状況に至る理由、原因を把握する
  4. チームの組織化:
    チームの現在の目標に対する効果的な役割分担と協働体制(相乗効果の創出)を構想し、メンバー各人との合意形成を図る
  5. 人材育成:チームメンバー各人の役割遂行において、各人のどのような課題をどのくらい解決するのかを明確にし、本人と共有し、成長を促進する
  6. モニタリングと介入:
    チームメンバー各人のモニタリングとコーチング的支援をする

1、2は主に業績と戦略の明確化、3から6は主に達成の支援と人材育成(将来投資)だと言えます。
これだけ、と思われたでしょうか。それとも、こんなに、と思われたでしょうか。
もちろん、より詳しく具体化していけばそれぞれより多くの仕事に細分化されていきます。
必要なスキルを詳細に説明しようとするならば、それも必要なことですが、そうすると、より具体的な部分で状況による異なる部分も出てきます。
しかし、それら詳細は別の記事に譲り、この記事では、本質部分に焦点を絞って説明します。


2.マネジャーの仕事に必要なスキルkatz model

先に掲げたマネジャーの6つの仕事の対象は、
1、2が主に業績であり、3から6がチームメンバーつまり、人あるいはチームということになります。

R.カッツは、マネジャーに必要なスキルとしてコンセプチュアル・スキル(概念思考)、ヒューマン・スキル(対人関係力)、テクニカル・スキル(業務知識・技術)の3つを掲げ、
上位マネジメント職になるほどコンセプチュアル・スキルが重要になると指摘しています。
その逆に、プレイヤーは主にテクニカル・スキルが求められます。
コンセプチュアル・スキルもヒューマン・スキルもマネジャーだけに必要というわけではなく、組織に参画する以上は新人であっても必要不可欠です。

従って、カッツが指摘する3領域のスキルをプレイヤー時代からバランスよく機能させ磨く人もいれば、直接的に求められるテクニカル・スキルを向上させることに傾注する人もいます。
マネジメント職になってから前者と後者の差が出てきます。

実は、プレイヤー時代から自身の「マネジメント」は、本人自身の責任であり必要不可欠なのです。
具体的に言えば、
・本人に与えられた「仕事のマネジメント」と
・「人(自分自身のモチベーション、効果性)のマネジメント」です。
いや、仕事のマネジメントの責任は、指示をした上司なのでは?、と思う人もいると思います。もちろん、上司にその結果に対する責任はありますが、それは組織の職責上のことです。
与えられた仕事を言われた通りにこなしただけなので、失敗しても自分の責任ではないという姿勢で取組めば、自己成長は望めませんし、成果が上がっても自らの貢献とみなすことはできないでしょう。
問題意識を持って取組み、より効果的、効率的な進め方を自ら考え、更なる成果を上げられるように提案し、実行することも可能です。それが自律的行動です。
また、自分自身の感情や身体の状態が成果に影響を及ぼすことについて、自らそれをコントロール、調整するのも自分です(セルフマネジメント)。丁寧な上司であればアドバイスをしてくれるかも知れませんが、主体はあくまでも本人自身でしかありません。
プレイヤー時代に、全て上司や先輩に委ね、指示されたことをこなすだけだった人は、コンセプチュアル・スキルやヒューマン・スキルを後退させてしまう可能性さえあります。


3.3つのスキル以上に重要なこと

コンセプチュアル・スキル、ヒューマン・スキル、テクニカル・スキルについてもう少し掘り下げてみます。

コンセプチュアル・スキルは概念思考と説明しましたが、概念的に思考するためには、論理的に思考できることが前提になりますので、カッツの指摘よりももう少し範囲を拡げ「思考系スキル」と捉えていただいた方がよいと思います。

また、意外に思われるかも知れませんが自らの強い意志も必要不可欠です。
論理思考は客観性が求められますが、概念思考は主観から生じるからです。

マネジメント・スキルの解説において自らの意志の重要性が指摘されることは少ないのですが、これこそが最も重要なのです。

中には、上層部やリーダーの決定を従順に受け、それを執行する役割がマネジメントだとし、マネジメントの立場に当事者の意志は不要もしくは阻害要因と見做しているように思える説明も見受けられます。しかし、少なくとも現在の多くの組織状況で、この考え方を適用すれば、組織は円滑に機能できなくなります。

マネジメントに求めららる意思決定とその責任は、選択肢の中で唯一の正解があるわけではなく、いずれも一長一短のある状況が殆どです。もし論理的思考の帰結として唯一の正解が得られるならば、定型的な判断業務ですから、マネジャーの仕事ではなく、メンバーもしくはコンピュータの仕事です。
従って、非定型の意思決定には主観的な価値判断が不可欠なのです。実際、感情等の主観性を司る脳部位を損傷した場合、些細なことでも自分で決められなくなってしまうことがわかっています。

また、ヒューマン・スキル=「対人系スキル」の起点は、自己理解です。
他者とは異なるユニークな存在として自己をどのくらい客観的に理解できているか、今この時の自身の感情はどのように変化しているのかなどをモニタリングし、適切に調整できなければ、自分とは異なる主観を持った他者を理解し、受け容れ、認め、対等な人間として尊重し、信頼することはできません。
セルフマネジメントの起点も、自己を深く理解し、自分自身を現在の在り様を受け容れ、認め、尊重し、信頼することが基礎になります。
そしてまた当然これも、客観的な判断ではなく、自らの主観的な意志で他者を信頼するということなのです。


4.実践を通じてマネジメント・スキルを向上させるstep by step

最初に列挙しましたマネジメントの6つの仕事を簡潔に再度列挙しますと、

  1. チームの貢献領域の明確化と共有
  2. チームの中長期目標と短期目標の明確化と共有
  3. チームメンバーの状況把握
  4. 役割分担と協働体制の構想と合意形成
  5. チームメンバー各人の仕事を通じた人材育成
  6. チームメンバー各人のモニタリングとコーチング的支援

まず1から4について、前任者の行っていたことや上層部や上司の指示は一旦脇に置き、自ら状況を調査・分析した上で、ご自身の意思として「どうあるべきか」を構想してください。特に最初はじっくりと時間を掛けて行うことをオススメします。
上司や上層部の意向とご自身の判断の異なる部分について、相互の理由を充分に検討してみてください。
最終的にはご自身の判断と上司や上層部の意向を摺り合せ、合意形成を図ります。
上層部との合意形成は現場マネジメントの土台になりますので、それが不充分であれば、チーム内の運営に矛盾が生じ、問題が生じやすく、不効率な状況に陥ります。
とは言っても、はじめから100%の合意形成が困難な場合は、実績を上げながら上司や上層部との合意度合いを高めていくという考え方も必要です。
そして、チームメンバー各人の役割や育成課題等をメンバー各人との合意形成を図っていきますが、その際、チーム方針や目標が上層部や上司とどの程度合意できているかをメンバーとどこまで共有すべきかということに関しては、メンバーの成熟度合いや組織状況によってケースバイケースだと思います。これもマネジャーとして判断する必要があります。しかし、ご自身が判断した内容や理由は、それぞれのメンバーが理解しやすい言葉で明確に説明することは必要です。これは、チームメンバーを尊重し、誠意を示す第一歩でもあります。

活動結果としてのアウトプットの出来不出来や、結果の良し悪しを、客観的に評価し、原因・理由を分析し改善を重ねていくことがマネジメントですが、それが即ち自身のマネジメント・スキル向上に繋がります。
自分の意志、問題意識を持ってチームや仕事に誠実に向き合う姿勢が、最も重要です。
現実には、自分や他者を誤魔化して、その場をやり過ごさざるを得ない場面もあるかも知れませんが、いずれそのつけが廻ってくることは意識しておく必要があります。


いかがだったでしょうか。多くの企業ではスキル評価の尺度にコンピテンシー(行動特性)を用いることが多いと思いますが、実際にご自身の組織で運用されているものがあれば、その項目名や定義を眺めてみてください。厳密には名称は違っても例えば、「達成志向性」「対人理解力」「部下育成力」「交渉力」…など、このようなことを意味する項目名があると思います。細分化されると難しそうに見えますが、根本は本人自身が「そうしたいという意志をどの程度強く持っているか、否か」ということに尽きます。逆に、「過大な役割や目標を指示されてしまった、何とかしなければ、できるかな?…」などと、後追いモードになってしまうと、更に難易度が上がってしまいます。先ほども述べましたが、上司の指示などは一旦脇に置き、自分で役割や目標を設定してみてください。もちろん自分に都合よくと言う意味ではありませんよ。上下左右の状況を踏まえた上で、それぞれが納得する内容が理想です。これを行うだけでも、論理思考、概念思考のトレーニングになりますし、自分なりに設定したものにはモチベーションも責任感も持ちやすくなります。最初は大変かも知れませんが、できるだけ気持ちよく仕事ができるように、是非実行してみてください。邪魔が入らず、じっくりと考えられる環境が必要ですので、将来の仕事を楽にするための投資と思って、休日にリラックスした状態で考えてみてください。より詳しくテーマごとにスキル解説をした記事もありますので参考にしてみてください。現場でお困りのことなどありましたら、メッセージにご記入ください。時間がかかるかも知れませんが、できる限りご返信させていただきます。では皆さん、頑張ってください。


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