マネジャーに必要なスキルとは

マネジメントを行いながら、自分自身のマネジメント・スキルがどのレベルなのか確認したい。
強みや弱みを把握して、今後どのようにすればよいかを検討するための客観的な指標が欲しい。
会社の制度で上司から評価はされているが、明快ではない。
などと思っていませんか。

ご自身のスキルレベルを客観的に自己評価することは、スキル開発には不可欠です。
上司など他者の評価も有益ですが、それ以前に自己評価をどれほど客観的にできているかが、スキル開発の効果性に大きく影響します。

そして、自分自身が部下育成をするときにも、部下本人がどれほど客観的に自己評価し、自身の課題を適切に認識できているかが最重要事項です。

私は30年上、500社以上企業様に人事教育分野で関わらせていただき、マネジメント研修の受講者は3万名を超えています。
人事評価というと、評価する側の制度理解、評価スキルやフィードバックスキルなどに焦点があてられ、客観的な自己評価を促すことがなおざりになっていることが多いようです。

この記事では、マネジャーに必要なスキルを要約すればどのようなもので、そのレベル判定をどのようにすれば、できるだけ客観的な自己評価が可能となるのか、その考え方をできるだけ簡潔に説明しています。
ご自身が期待されている役割や置かれている状況に合わせて自己評価の枠組を持っておくと、部下育成時にも応用できると思います。
マネジャーに必要なスキルは、人事系コンサルティングファームや各企業で定義されていますが、自己評価を前提に、あまり項目を細分化せず、大きな括りで汎用的な内容を提示できるように努めています。


1.マネジャーに必要なスキル

別の記事で「マネジメントに必要なスキル」について書きましたので、そちらも併せてお読みいただければと思いますが、ここで簡単に触れておきます。

「マネジメントに必要なスキル」は、
思考系スキル、
対人系スキル、そして最も重要なのは主体的な意志だと述べました(その理由や詳細は記事を参照してください)。この記事では「マネジャーに必要なスキル」と題し、自己評価に活用できるよう、もう少し詳細に解説いたします。


2.ベーススキルskills-required-for-managers

ベースは、スキルよりも深いレベルのものが含まれますが、スキル的に向上させていくことも可能です。
その意味でフォーカスしていただくとよいと考えられるスキルは、
「自己理解」と「主体的な意志」です。

この二つは全てに影響を及ぼすと言ってよいでしょう。

① 自己理解

自己理解とは、簡単に言えば自分自身のことをどれほど客観的に理解できているか、ということです。
自分自身のこととは、プロフィールに書かれるような表面的なことではなく、過去から現在にいたる理由や原因、今現在の感情の変化とその理由、そして将来にわたって望んでいることとその理由、などを客観的に認識できているかということです。今よく話題になる”アンガーマネジメント”などセルフコントロールやセルフマネジメントも含んでいます。

例えば、現在ある企業のある職務に就いている場合、何故その会社に入り、その職に就いたのか、それは自身でどの程度望んでいたことなのかなど、
あるいは、上司からあることで注意されているその瞬間に、今自分は焦っているな、もっと叱責されるのを避けるために取り繕おうとしている、でももう終わりそうだからよかった、自分から詳しい状況を報告しなくてもいいよな、折角終わりそうなんだから。でも、それでいいのかな。などと、
過去、現在、将来の自分の状況を冷静に俯瞰し、よりよい行動は何かを客観的に考えられることでもあります。

② 主体的な意志

主体的な意志というと決めたことは最後までやり抜くなど「意志の強さ」を想起されそうですが、必ずしもそういうことではありません。
平たく言えば、様々なことに対して自分の考えや意見、想いがあることを指しています。
逆に、主体的な意志が全くない典型イメージは、指示通り動くロボットでしょうか。

自己理解と主体的意志は、相互に影響していると考えられますが、一概に相関あるいは逆相関の関係とは言えません。
自己理解が高いとうつ傾向になりやすいと考えられ、その場合主体的な意志は陰に隠れてしまうこともあります。
一方主体的な意志が強い人は、自己理解が疎かになる可能性があります。
それぞれ逆相関的な例ですが、相互が相まって高まっていくならば人間的な成長を遂げていると考えられることと、
次項以下で説明する「対人系スキル」「思考系スキル」の文字通り土台でもありますので、ベーススキルと題しました。


3.対人系スキルHuman Skills

対人系スキルとは、ヒューマンスキル、対人関係スキルなどと呼ばれ、他者や集団の理解や関係構築に関するスキルを指します。
一般に多くの企業で用いられている能力評価項目として該当するものを幾つか列挙いたしますと、

対人理解力、対人影響力、関係構築力、組織理解力、表現力、交渉力、部下育成力、チームリーダーシップ、統率力

など挙げればきりがないほど、様々な角度から分化させることが可能なスキルです。
企業研修でよくテーマに挙げられる

コミュニケーション、リーダーシップ、プレゼンテーション、コーチング、面談スキル、あるいはマナー、接遇・接客

なども、全て対人系スキルが中核にあります。

余談ですが、コミュニケーション・スキルは若年層向けトレーニングに適し、リーダーシップ・スキルは中堅以上といった誤解が散見されます。
コミュニケーション、リーダーシップ、いずれも一般用語として使われていますが、必ずしも適切に理解されていない、もしくは適切に使われていないことを示しています。

例えば、リーダーシップはリーダーに求められるスキルという解釈が未だに暗黙の了解になっている可能性が高いと思います。

本来は、組織やチームで協働するメンバーにはコミュニケーション・スキル同様等しく求められるのがリーダーシップ・スキルです。

では、これほど多岐にわたる対人系スキルを客観的に自己評価するとなると大変だと思われるかも知れませんが本質を押さえれば、それほど大変ではありません。

③ 対人理解

それは、自分とは違う他者を自分のフィルターで評価せず、批判せず、どれほど尊重し、信頼し、興味を持って理解、共感することができるか、ということに尽きるからです。

当たり前ですが、自分と全く同じ感じ方、考え方、価値観の他者はいません。違って当然なのです。
そしていずれがよい、悪いということでもないのです。

人間の性質として、違いに対して本能的に拒否反応をしてしまう傾向があります。もしそのような内的な態勢ができてしまえば、相手に興味を持ち、理解することは困難でしょう。

だからと言って、仮に組織内のメンバーが皆同じであったら様々な状況に対応することはできません。
違うからこそ興味を持ち、違うからこそ相互補完し、相乗効果が生まれる可能性があるのです。

そもそもマネジメントに期待される大きな役割の一つは、
それぞれ異質な個性やそのよさを有機的に結びつけ、全体としての効果性を高めることです。

ですので、どれほど人に興味が持てるか。役割上の人ではありません。ひとりの人間として興味が持てるか、ということです。

④ 対人影響

また、互いの事情を踏まえて交渉したり、相手の成長を促進したり、チームが停滞しているときにシフトチェンジしたり、つまり影響を及ぼす、リーダーシップを発揮するのは、相手を理解した上で、自らの主体的な意志を持って誠実に臨むことに他なりません。

ですから、この対人系スキルは、

対人理解と対人影響
に集約できます。

そして、このようなことができる状態に自分が近づいているのか、本人自身がきっとよくわかると思います。
可能であれば、日常的に関わっている他者に率直な意見を求め、素直に耳を傾ければ、より客観的な自己評価にしていくことができます。


4.思考系スキルThinking skills

思考系スキルは、論理思考(ロジカルシンキング)と概念思考(コンセプチュアル・スキル)の二系統があります。
論理思考は客観的、分析的思考であり、
概念思考は主観的思考、統合的思考です。
ある特定の専門職であれば、いずれか一方が強く求められるということもありますがマネジャーは両方が必要です。

⑤ 論理思考

人間の主観というものは絶対に排除することはできませんから、全き客観というのは実現し得ないのですが、だからこそ、意識的に客観的な思考をすることが求められます。組織メンバーがそれぞれの主観だけで話していれば協働は不可能ですので、率いるチームの協働を促進したり、利害不一致の他部署や上層部との合意形成を図る、交渉するなどにおいて、論理思考は基礎になります。しかしこれに関しては、多くの企業や教育研修でも強調されていますので、マネジャーになる前から認識されていると思います。一方言葉は知っているが、よくわからないという方も多いのが概念思考です。

⑥ 概念思考

論理思考が前提ではありますが、マネジャーには概念思考がより重要です。
簡単に言えば、客観的に認識した具体的な事象を抽象化し、その本質を掴み概念化(言語化)すること、と言えます。

抽象化、概念化のプロセスは、主観的なものです。

既にある概念も基本的には主観的な解釈の結果、あるいは仮説にすぎません。
従って、新たな概念や仮説を生み出すことに着目した能力の呼び名は創造力ということになります。

全ての前提が変化している現在の状況において、マネジャーは外部環境も恐らく異なっているであろう将来に適応すべく、現在のチームを導いていかなければなりません。
そんな状況で足下だけを見てチームを方向づけていては、早晩、問題、課題が山積し廻らなくなります。

課題発見、課題設定、ビジョンと目標の設定など、いずれも論理思考の上に概念思考が備わっていなければ、適切に行うことはできません。

特にプレイヤー時代に求められる機会が少ないと思われる概念思考が必要とされるマネジャーの仕事は、最初の頃はヘビーかも知れません。
慣れないうちに概念思考を必要とする仕事を、集中しにくい通常の勤務時間に行おうとすれば時間ばかりを奪われる結果になりかねません。
思考の質が髙められる環境で時間制限を設けて取り組めるようにするのが得策です。そのようにして取り組めば、仕事を通じて概念思考も高められます。


いかがだったでしょうか。
今回はマネジャーに必要なスキルを自己評価するための項目として、

skills required for managers

ベーススキル 自己理解 主体的な意志
対人系スキル 対人理解 対人影響
思考系スキル 論理思考 概念思考

◆ベーススキル

①自己理解
②主体的な意志

◆対人系スキル

③対人理解
④対人影響

◆思考系スキル

⑤論理思考
⑥概念思考

のように3カテゴリー6スキルとして解説いたしました。

例えば、最低はマイナス状態(ー1レベル)から、最上位レベルは到底到達し得ない状態(5レベル)までを想定し、
毎月または最低でも四半期に一度、当該期間中のご自身の行動や出来事をふりかえって、自己評価をしてみるとよいでしょう。
その際、評価結果の理由(具体的な事実との照合)と自分なりの原因分析も併せて記録してみてください。
そして次の自己評価までに取り組む課題についてはどのように上のレベルにしていこうと考えているのか、それが試される可能性のある直近のトピックにはどんなものがあるのか、なども記載して取り組んでいただければ、自己成長をセルフマネジメントしていけます。気楽に取り組んでみて下さい。


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