組織力があがる”人と組織のマネジメント”

よい人材がなかなか採用できない。
費用をかけてヘッドハンティングしたが思ったほど成果が出ない。
費用と時間をかけて人事制度を導入したが機能しない。
研修の機会を増やしたが効果が出ているのかはっきりしない。
給料を上げたが効果が出ない。
など、人と組織の課題は尽きませんね。

マネジメントの中核だとわかっていても、対策の効果が出ないと、どうしてよいかわからなくなってしまいますよね。

人と組織の課題は、組織の大小にかかわらず単発的な対策では成果が上がりにくいものですし、
成果が現れるまでに時間がかかり、対策と成果の因果関係も明確にはつかみづらいものです。

各対策相互の影響やその結果を想定せずに行うのは、
思いつきで車の一部だけを改造し、思わぬマイナス効果も招いてしまうことに似ています。

私は30年以上、500社以上の企業様に人事教育分野で関わらせていただき、マネジメント研修の受講者は3万名を超えています。
経験的に、組織が大きくなるほど人事、人材開発、現場の三者連携が希薄になり、それぞれが一所懸命に対策しているにも関わらず成果が出ない、あるいはむしろ新たな問題が発生した、ということも少なくないようです。

この記事では組織力強化を目的に、
人と組織のマネジメントを点ではなく面で推進する必要性とその具体策を検討します。
実際の状況に照らしながら参考にしていただければ、無駄が減り、着実に成果の上がる対策が可能になります。

断片的な対策の繰り返しにならないよう、
人と組織のマネジメントの全体像をつかみ、一つ一つが有機的に繋がった対策にし、効果を高めてください。


1.すべては組織力向上のため

人事制度も、人材採用も、教育研修もすべては組織力の向上が目的である筈です。
一口に組織力の向上と言っても、何のための組織力なのか、
その目的、目標によって異なります。
従って、必要な”組織力”とは、事業の目的、目標を達成できるレベルであり、それ以上でも以下でもありません。

低すぎる組織力であれば事業の継続が困難になりますし、
高すぎる組織力の維持は、活用できない資源にコストを掛けていることになります。
当たり前ですが、前者の場合、①組織力を高める、②事業目標を下げる、
後者の場合、③組織力を抑える、④事業目標を高める、の4つのアプローチで、事業目標(事業戦略)と組織力とのバランスをとることになります。組織力

②④は「戦略は組織に従う」と言うことであり、①③は「組織は戦略に従う」と言うことになります。
ここでは組織力の調整がテーマですが、③は組織力を下げなければならないという課題ではなく、実際は、余剰組織力の有効活用を課題とすることが多いと思いますので、結果的に④の「事業目標を高める」になります。

このように整理してきますと、
・事業目標に対して、低い組織力を高める必要がある状況で、
・どのような組織力向上策が適切か、
という話になってきます。

とは言え、繰り返しになりますが、
組織力が高い、低いというのは、事業目標(事業戦略)に対してということになりますので、
組織力の中身をもう少し具合的にしておいた方がよいと思います。


2.組織力の向上策

代表的な組織力の向上策の影響を見ながら、組織力の本質は何かを検討してみたいと思います。
組織力の向上策として真っ先に浮かぶのは、”社員研修”ではないでしょうか。組織力への影響要因
研修の内容や方法によって一概には言えませんが、研修の目的は社員個々人の能力開発を主な目的にすることが多いと思います。

社員個々人の能力も組織力に影響を及ぼす大きな要因ですが、
個々人の能力の総和が組織力というわけではありません
また、能力と一口に言っても、どのような”能力”に焦点をあてるかによって組織力への影響度合いは変化します。

あるいは、営業組織では、”インセンティブ”なども組織力向上策としてあがってくるかもしれません。
しかし、これはあくまでも個人への動機づけですから、組織力への影響としては間接的です。
また、”金銭的報酬”はすぐに慣れてしまい刺激として機能しなくなり、
だからと言ってそれを止めると従前以上にモチベーションの低下を招きます。
つまり麻薬のようなものですので、慎重に運用する必要があります。

金銭的報酬は評価フィードバックの一つですが、より広く”評価制度”などは、盛り込む内容によって組織力に直接的な影響があると考えられますが、1年以上運用しなければ効果の検証は困難だと思いますし、その効果性は評価制度の設計内容だけではなく、運用の質、つまり現場マネジメントの質が大きく影響します。

そして採用、異動、退職、休職など”人員の変動”は組織力に直接的な影響を及ぼします。
増減したメンバーにフォーカスしがちですが、
重要なのはむしろ
・職場の”チーム風土”やメンバー”相互の影響関係”の変化
・メンバー個々人の”感情”の変化
・チーム内での”役割”の変化
などです。

個々人の”感情”が変化するタイミングは、何も人員の変動に限りません。
組織マネジメント上、最も焦点が当てられる個人の感情はモチベーションということになりますが、同じ人であっても一定ではありません。
中長期的に変化するのは当然ですが、極端に言えば1日の中でも、対面する相手によって、取り組む仕事によって、認識の変化によって、上司の一言によって、など様々なことで変化していきます。

個人の感情は、周囲の他者の感情を増幅したり、却って減衰させたりして伝播していきます。
基本的に組織は、個人ではなし得ない目的を達成するために組織されるものですから、
組織力には、1+1が2以上になるプラスの相乗効果が期待されます。
相乗効果には、反目し合って互いの力を相殺してしまうというようなマイナスもあり得ます。

組織力に大いに影響する相乗効果は、
・個人の感情や考え方と、
・個人間の関係によって
プラスにもマイナスにもなり得るということです。

しかし、組織としての代表的な向上策の多くは、個人の感情や個人間の関係を直接的な対象としてはいません。


3.個々人と関係のマネジメント

結局、組織力は個々人のモチベーションや能力の相互作用の結果ですから、
一人ひとりの状況把握とフォローが必要なことは言うまでもありませんが、
モチベーションとは感情の一種ですので、モチベーションに限らず、
個々人の感情が常に望ましい状態になるよう、チーム状況や環境を整えることが重要です。

そして職場における感情変化は、おおよそ相互関係の中で生じますので、個人間の関係が良好になるようにすることも必要です。

これらに関しては、現場のマネジメント、即ち各職場の管理者の影響が大きく、それがキーになることは確かです。
ですが、管理者任せにするだけではなく、
組織としての明確な方向づけは不可欠です。

組織としての明確な方向づけがないまま、管理者研修を実施したり、評価制度を導入しても、その効果は限定的です。場合によっては、いらぬ誤解や不協和音を招く恐れすらあります。

組織としての明確な方向づけの具体例としては、
例えば、自チームのチーム力向上を管理者の優先的な職責として位置づけ、
管理者の業績としての評価対象とする、
ということが考えられます。

つまり、チーム・メンバー個々人のモチベーションや能力向上もさることながら、
相互作用によるシナジー効果をどれだけ引き出すことができたかを、管理者の業績とするということです。

この時してはならないのは、チーム力ではなく結果の量的指標(売上)などを同義と捉えて、
売上が上がっている、ということはチーム力を高めたと言うことだ、
と解釈してしまうことです。
これですと、管理者自らフィールドを走り回って売上を上げるような
管理者のスーパープレイヤー化を助長し、
チームメンバーを育てることも、
機会を与えることもおろそかになりがちですから、
目的とは真逆になってしまいます。

そして、個々人の感情や個人間の関係がそれぞれ良好であるというのは、
単に個々人が楽で居心地がよいようにするということではありません。
それではむしろパフォーマンスは下がってしまいます。


4.組織力を高める具体策

組織力を高めるためには、
「個々人の感情」「個人間の関係」
それぞれを良好に保てるようにマネジメントする必要があると申し上げましたが、
それぞれに連なる指標を図に列挙してみました。組織力の指標

基本的に図中の下から上へと発展しますが、下の指標、例えば[自己理解]のレベルが100点満点になってからその上の[自己の受容と尊重]や[他者への興味関心]へ進むというわけではなく、[自己理解]が仮に10点であっても、そのレベルなりに次のレイヤーにも進み、下から上まで何度も循環しながらそれぞれが発展していくというイメージです。

基礎部分は、組織への参画時に最低限のレベルは必要だと思いますので、知識・技術以前に重要な視点です。
社会経験のある中途採用であれば、実質的に適応の各指標についても最低限のレベルが期待され、
管理職には促進の各指標が発展している必要があります。
これは自身のみならず、他者の各指標の発展を促進できるためには、という意味です。

そして左列の[個々人の感情]に関する各指標は、個人にのみ帰属するものととらえられがちですが、[自己理解]でさえも、一個人の中だけで完結せず、やはり他者との関係が大きく影響しています。
従って、参画するチームの状況や風土が、参画者のこれらの発展あるいは阻害に影響します。

つまり組織力を高める現実的な具体策は、
個々人のこれらの指標を高めることが管理者の職責であることを明確にし、
的確にモニタリングできる方法を共有し、公正な評価をし続けることです。

ここに掲げた先行指標はあくまでも一例ですが、
社内で検討し合意できる指標を策定し、運用し始めることが早道です。

運用していけば、自ずとブラッシュアップされていきます。

またこれらをまとめて表現すれば、
チームの成熟度指標群であると捉えることもできますし、
チームワーク促進のための戦略(図の下から上への道筋)とも考えられます。

この辺りまでの道筋は、各管理者に委ねる前に、組織の現時点での仮説として示す必要があります

仮に運用後、仮説が適切ではなかったとわかったとしても、運用した指標での評価は公正に行わなければ、信頼を失います。

また、変更する際にも充分にその理由も含めて合意形成をする必要があることは、言うまでもありません。


いかがだったでしょうか。
今回は組織力を人間的側面を中心に検討してみました。
組織力には、
財務力や知財、影響要因にも職務内容、
など様々な要素が絡んできますが、論点が拡散しますので、ここでは触れませんでした。

しかし、これらとて、日々の業務の中で生み出されるとするならば、まずは組織の人間的側面を念頭に置く必要があります。

組織力に影響を及ぼす指標について、ここではそれぞれの細かい定義まではいたしませんでしたが、
社内で検討し、合意した上で、断片としてではなく有機的に繋がりがあり、
整合性のある種々の施策を打つようにしていただけたらと思います。

それぞれの組織にとって、
”組織力”とは現時点でどのように認識すべきか、何を目指すべきか、
影響要因には具体的にどのようなものが考えられるか、
など抽象的なブラックボックスに閉じ込めておかずに、是非とも具体的に検討してみて下さい。

様々な立場のマネジャーの皆さんによる率直なディスカッションで、
オリジナルな認識が合意できれば、組織力の向上に向けた大きな一歩を踏み出したことになります。

組織力は市場優位性に影響します。

くれぐれも、本質的な合意がないままに行う研修や制度、システム等の導入で遠回りをしないようにしてください。
このような議論や検討は、往々にして簡単に済まされてしまいがちですが、近道のためには不可欠です。

まとめて一気に行うのが大変ならば、
折に触れ議題で取り上げ、徐々に共通認識化していただくのでもよいと思いますので、
是非社内で話題にしてみてください。

疑問などございましたら、できる限りお答えいたしますので、お気軽にお尋ねください。


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